2021- ライブ配信映像、生地海岸堤防に設置されたm型看板(230×1410㎝)、カンバスにアクリル(31.8×41㎝)、テキスト サイズ可変
「蜃気楼について、私たちは(おそらく皆さんも)すっかり誤解していて、あるはずのない景色が突如浮かび上がる不思議な現象かと思っていた。けれど実際には、光が冷たい空気と暖かい空気の間を通る際にカーブする事で、遠くにある景色が上や下に反転して見える科学的な現象なのだそうだ。
蜃気楼で有名な黒部の生地海岸に、私たちは大きなmに似た形の看板を設置する。 気まぐれな蜃気楼によって大きな∞が出現するのを期待しているのだが、実際はどうなるかさっぱり分からない。ちなみに映像に映っている水面も、本当は地球の丸みのせいで隠れて見えないはずの場所が、大気によって光が屈折して見えている『見かけの水面』らしい。
不確かな時代と耳にするが、私たちが見ているこの世界自体、もともと蜃気楼のように不確かで『見かけ』のものなのかもしれない、とか思う。」
(展示テキストより)
2021年に富山県・黒部市美術館で開催された個展「蜃気楼か。」のために制作された屋外プロジェクト。蜃気楼で全国的に有名な黒部市生地の護岸に幅14.1m、高さ2.3mの巨大な「m」型看板を設置し、現地で秋から冬にかけて多く見られるという下位蜃気楼により図像を反転させて「∞」を浮かび上がらせることに挑む。
8km離れた魚津市、海の駅蜃気楼に設置された超望遠カメラからの映像が、常時インターネットでライブ配信される。いつ現れるとも知れない蜃気楼という自然現象を前に、鑑賞者は不安と期待を感じながら本展覧会にも通じる「不確かさ」を楽しむことを要求される。人間と自然現象とのコラボレーションとも言えるだろう。
おもな展覧会
2024 バンコク・アート・ビエンナーレ2024 Nurture Gaia、BACC、タイ
2023 千葉県立美術館、千葉(個展)
2021 黒部市美術館、富山(個展)